在宅訪問への薬剤師の課題

政府は高齢化が進む中、医療・介護をなるべく在宅へ移行しようという政策を進めています。
急な治療を必要としない患者の長期入院や、介護重症度の低い高齢者の施設入居を減らし、自宅療養、つまり在宅でも生活可能な高齢者をなるべく在宅に回すことで、これらにかかる経済的負担を減らそうという考えです。
2014年度の診療報酬改定により、在宅医療への取り組みが高く評価されることになりましたが、病院も薬局も、現実的にはなかなか在宅医療を普及させる余裕はありません。
特に薬局は、門前の病院が在宅を実施していても、往診に同行はせず、必要な薬を調剤するだけ、もしくはまったく関わっていないというケースが非常に多いです。
これは薬剤師側の職能アピール不足が原因とも言えますが、医療機関が薬剤師の在宅訪問について「知らない」というのも要因の1つです。医療保険でも介護保険でも、薬剤師が患者宅を訪問し、服薬管理指導を行うには、医師の指示が必要です。薬剤師の独断で訪問しても、在宅医療に関する報酬は算定できず、ただ働きになってしまうのです。医師が在宅医療に関して薬剤師が介在する必要性を意識しなければ、実際の行動には移せません。
もう1つ、在宅医療へ消極的である理由として、「薬剤師が外来で手いっぱいで対応できない」、「24時間365日、何かあれば常に対応しなければならない」、「無菌調剤の設備がないため対応できない」といった声が挙がっています。
特に、「採算が合わない」との声は頻繁に聞こえてきます。そのため、効率良く報酬を得るために、施設訪問に重点を置く薬局が多いです。在宅医療の推進という政府のねらいからは遠のいているようにも思われます。
独居老人など、本当に訪問を必要としている居宅への医療普及のためには、在宅医療への調剤報酬の評価をもっと高くしたり、薬剤師の人数確保に努めたりといった対策が必要でしょう。